[最終更新日]: 2024/08/06
ふとした瞬間に、子どもがお口をポカンと開けていることはありませんか?実は、このお口ポカンを放置しておくと、歯並びが悪くなる可能性があるのです。ここではお口ポカンの原因と懸念されるトラブル、その改善方法についてまとめました。
子どもの
「お口ポカン」は
なぜ起きる?
子どもに見られる「お口ポカン」とは、日常的に口が開いたままの状態になっていること。「お口が開いているよ」と指摘するといったん口を閉じますが、すぐにまたお口ポカン状態に戻ってしまいます。
この状態のことを、歯科的には口唇閉鎖不全症(こうしんへいさふぜんしょう)と呼んでいます。ではなぜ、このお口ポカンは起こるのでしょうか?
口周りの筋肉が弱い
お口ポカンが起こる原因の多くは、口周りの筋肉(口輪筋)や舌の筋肉が弱いこと。これらの筋肉がしっかり発達しないと、口をうまく閉じられなくなります。
口周りの筋力低下は、「よく噛まなくても飲み込める、やわらかい食事が多い」「風車や風船など、口輪筋を鍛えるような遊びが少なくなっている」ことが原因で増えていると考えられています。
お口ポカンが
引き起こす
歯並びトラブル
では、このお口ポカンが続くとどのようなトラブルが起こりやすくなるのでしょうか。
歯並びが悪くなる
口をポカンと開けているクセがあると舌を正しい位置に置いておくことができず、下あごの方向へ舌が垂れ下がってしまいます。これを低位舌(ていいぜつ)と言います。
低位舌になると下あごの歯に力が加わりやすくなり、すきっ歯や反対咬合(咬み合わせが逆の状態)といった歯列不正につながります。
顔がゆがみやすくなる
お口ポカンの状態が続くと口周りの筋肉・あごの骨が十分に発達せず、顔にゆがみが生じるケースがあります。「あごがない」「あごと首の境目が曖昧」「顔が間延びしている」といったお口ポカン特有の顔つきは、アデノイド顔貌(がんぼう)と呼ばれます。
お口ポカンを
改善する方法
では、子どものお口ポカンはどのように改善したら良いのでしょうか。その方法をご紹介します。
おもちゃで楽しく
トレーニング
風船・風車・吹き戻しといった昔ながらのおもちゃは、お口周りの筋肉を鍛えるのにおすすめ。大人も一緒に遊びながら、楽しく口輪筋をトレーニングすることができます。
また、フーセンガムを膨らませるのも、良いトレーニングになります。ただし、ガムについてはノンシュガータイプや、むし歯予防効果のあるキシリトール入りなどを選ぶようにしましょう。
専門家の力を借りる!
口腔筋機能療法(MFT)
口腔筋機能療法(MFT)とは、歯列を取り巻く舌・唇・頬などの筋肉を強化して、正しく機能させるための訓練法。小さな子どもであれば歯並びが悪くなるのを防げますし、すでに歯並びが気になっている場合でも、適切に訓練することで矯正治療をスムーズに進められることがあります。
子どもの口腔習慣を改善する
「マイオブレース」
マイオブレースとは、取り外し可能なマウスピースを使って行う予防矯正のひとつ。マウスピースを平日1時間と就寝時に装着、さらにアクテビティと呼ばれるトレーニングで口周りの筋力や正しい姿勢を身につけ、歯並びが悪くなる原因から改善を目指していきます。
この方法であれば、歯並びが後戻り(治療前の状態に戻ること)することはほとんどありません。
まとめ
お口ポカンを「いつか治る」と思って放置し、気づいたら歯並びがガタガタになっていた…というケースは少なくありません。正しい歯並びには、舌や頬といった口周りの筋肉の発達が欠かせません。
できるだけ早いうちから専門家のもとでトレーニングに取り組み、十分な発達を促すようにしましょう。そのほうが、子どもへの負担も軽くて済むケースが多くなっています。
調査・文/坂野香織さん(歯科衛生士 有資格者)