[最終更新日]: 2024/12/16
過蓋咬合(かがいこうごう:ディープバイト)とは、口を閉じると上の前歯が下の前歯を完全に覆い隠し、下の前歯がほとんど見えないような状態、または下の前歯で上の歯の裏側の歯茎を噛んでしまうような状態を指します。この状態は、単に見た目が悪いだけでなく、歯ぎしりによる歯の摩耗や顎関節症を引き起こす可能性があり、歯や歯茎、顎関節への負担が大きいことが特徴です。また、発音に影響が出たり、口呼吸の原因になることもあります。そのため、早期の矯正治療により、正常な歯列にしていくことが重要です。
噛み合わせが深いとはどういう状態?
噛み合わせが深いことが気になる場合、鏡の前で、上下の歯を「イー」と噛み締めてみてください。下の前歯がほとんど見えない場合や、下の前歯の先が上の前歯の根元に当たっている場合には過蓋咬合(ディープバイト)の可能性があります。もし、セルフチェックで症状が確認できたら、必ず歯科クリニックで相談をしてください。過蓋咬合は歯ぎしりや顎関節症の原因となることもあるからです。歯科クリニックでレントゲンやCTスキャンなどによる精密な診断を行い、歯並びに合わせた治療計画を提案してくれます。
子供の噛み合わせが深くなる原因は?
噛み合わせが深い状態だけではなく、歯並びが悪い状態(不正咬合:ふせいこうごう)になるにはいくつかの原因があります。先天的なもの、後天的なものがあるのですが、ひとつの原因ではなく、いくつかの原因が重なって、噛み合わせが深くなるなどの不正咬合が起こります。
先天的な要因
先天的な要因には、生まれつきの骨格や歯の生え方の問題があります。例としては、次のようなものです。下顎に対して上顎が大きい・遺伝的に顎の骨、位置に問題がある・歯の位置・傾きが目立つ・上下の顎の骨の大きさがアンバランス・上顎と下顎の成長に差がある・前歯が過剰に伸びて、奥歯が成長せずに伸びていない、などです。
後天的な要因
後天的な要因としては、お口に関する癖が問題になります。例としては、次のようなものです。歯を噛みしめるクセ(歯ぎしりや食いしばり)・下唇を噛む、吸うクセ・口呼吸・虫歯治療で奥歯を抜いた・奥歯の欠損などです。
噛み合わせが深いとどのような症状を起こす?
過蓋咬合で問題になるのは、まず見た目の問題です。思春期に入る子どもでは大きな影響を受けるでしょう。しかし、過蓋咬合の問題は、見た目だけではなく、お口の機能などについても大きな影響を与えます。
歯ぎしりで歯が削れる
歯の寿命を左右する大きな要因の一つに、過度の負担が挙げられます。特に過蓋咬合では、歯ぎしりや食いしばりといった悪習癖がついてしまうことがあります。これらは歯の早期摩耗リスクを高めてしまい、歯の寿命を短くする可能性があります。このような歯ぎしりや食いしばりの問題に対しては、適切な治療や予防策を講じることで、健康な歯を長く保つことが可能です。
顎関節症になるリスク
過蓋咬合は、顎関節症を引き起こす大きな要因の一つです。 下顎の前歯が常に上顎の前歯に圧迫されることで、顎の関節に過剰な負担がかかり、顎の動きが制限されてしまいます。この状態が続くと、顎の軟骨が損傷し、顎関節症を発症するリスクが高まります。顎関節症の初期症状としては、口を開け閉めした際に顎から音が鳴ったり、口が開きにくいといったことが挙げられます。放置すると、関節の炎症や軟骨の変形が進み、口が開かなくなるなど、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。過蓋咬合が原因と考えられる顎関節症を予防するためには、定期的な歯科検診を受け、早期に異常を発見することが大切です。また、歯ぎしりや食いしばりの癖がある場合は、マウスピースの使用や生活習慣の見直しなども検討しましょう。些細な症状でも、早めに歯科クリニックに相談してください。
歯茎の炎症・前歯の虫歯のリスク
過蓋咬合では、下の前歯が上の前歯の根元の歯茎を常に圧迫するため、歯肉炎や口内炎を引き起こしやすく、歯周病のリスクも高まります。 上の前歯だけが口腔内の外気に直接触れることで乾燥しやすくなり、唾液による自浄作用が低下し、虫歯や歯周病になりやすいという悪循環を生み出す可能性もあります。特に、子供の噛み合わせは成長とともに変化していくため、早期の治療が重要です。放置しておくと、症状が進行し、より複雑な治療が必要になるケースもあります。
深い噛み合わせの治療法は?
過蓋咬合は不正咬合のひとつであり、前述したように歯の寿命が短くなる、顎関節症のリスクや歯周病・虫歯のリスクも高くなります。そのため、過蓋咬合に気づいた場合には早めに治療を開始することが推奨されます。治療方法は以下のようなものがあります。
ワイヤー・ブラケット矯正治療
矯正治療の中では一番スタンダードな治療方法です。歯の表面にブラケットという器具を接着してそこにワイヤーを通して、矯正力をかけ歯を動かしていく方法です。過蓋咬合の場合には」奥歯の高さを調整して前歯を歯ぐき側に動かしていきます。歯の表面に器具を創薬するので、周囲に矯正治療中だということがわかってしまうことが大きなデメリットです。
マウスピース型の矯正装置
透明なマウスピースを数週間に1回交換していくことで歯を動かしていくのが、マウスピース矯正です。大きな特徴は透明なので、周囲から気づかれにくいことと、自分で取り外しが可能なので、食事や歯磨きのときには外せることです。しかし、一方で対応できる症状が限られています。過蓋咬合でも重度の場合には治療対象とならない場合があります。
外科手術
重度の過蓋咬合では、手術も検討されます。顎矯正手術は、歯並びの悪さが骨格的な原因による場合に行われる手術で、上顎や下顎の骨を切断し、理想的な位置に移動させることで、歯並びだけでなく顔貌も改善する治療法です。 特に、上下の前歯が重なりすぎる「過蓋咬合」に対しては、ル・フォーⅠ型骨切り術や上顎前歯部歯槽骨切り術といった手術が用いられます。これらの手術は、歯を大きく移動させることができ、重度の過蓋咬合も効果的に治療することができます。顎の骨格的な問題を根本から解決することで、長期的な安定した治療効果が期待できます。
治療に掛かる期間は?
過蓋咬合だけではなく、不正咬合の治療全般に言えるのは、治療にかかる期間が長くなるということです。また、その期間は個人の症状により、大きく異なります。子ども矯正治療は大人よりも短い傾向にあり、1年半から2年程度となることが多いでしょう。しかし、乳歯と永久歯の混合期におこなう第一期治療で終了せずに、永久歯が生え揃ってからおこなう第二期治療へと移行することもあるので、その場合は長引くこともあります。
治療に掛かる費用は?
過蓋咬合の治療にかかる費用は、症状や治療方法によって異なります。一般的に小児矯正の場合は50万円から100万円程度でしょう。また、ほとんどの場合自費診療となりますが、厚生労働省が認定する先天性疾患が原因で重度の場合には、保険診療となることがあります。その場合の治療費用は20万円から30万円程度になるでしょう。
噛み合わせが深い症状に気づいたら早めに相談を
ご紹介してきたように噛み合わせが深い症状は、過蓋咬合とい症状のことです。そのままにしておけば、歯ぎしりの原因となったり、顎関節症や歯周病や虫歯の原因となったりします。子どもの過蓋咬合治療は、大人よりも短期間で済む可能性が高いです。お口の中の健康を保つためには、症状に気づいたら早めに歯科クリニックに相談をして、適切な治療をおこないましょう。