[最終更新日]: 2025/02/13
子供は成長していく中で、あごが発達し大きくなっていきます。それと同時に、きれいな歯並びにするためには、正しい位置に舌があることが重要です。
子供の歯並びが心配になる方はいますが、普段舌の位置まで気にする方はあまりいないかもしれません。しかし、最近の子供の中には、舌の位置が下がり気味になっているケースも見られ、健康や歯並びの悪さに影響すると考えられています。
この記事では、子供の舌の位置が低いと歯並びにどのように影響するのかをまとめました。また、低位舌とはどのような状態なのか、家庭でも可能なチェック方法、対処法などについても解説しています。子供の舌の位置が気になっている方や、対処法が知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
歯並びに影響する?
正常な舌の位置とは、舌が顎にぴったりと吸い付くようになっている状態を指します。
舌の位置が正常よりも下がると、下の前歯を舌で押してしまうことがあります。その結果、下あごが通常より前方に成長し、反対咬合(受け口)になるケースもあります。
また、あごの成長に影響を及ぼしてしまい、歯並びだけでなく、滑舌が悪くなるのも特徴です。そのような状態になると、口呼吸となり、アレルギー発症のリスクも高まります。
さらには、上の前歯よりも下の前歯が出ている下顎前突症(かがくぜんとつしょう)と呼ばれる状態になると、食べ物をしっかりと咀嚼してのみ込めなくなってしまったり、口が閉じにくくなり、うまく話ができなくなってしまうこともあります。
舌の位置が悪いと、歯並びだけでなく、健康にさまざまな影響を及ぼすため、早めに対処することが重要です。
低位舌(ていいぜつ)」とは?
最近の子供の中には、舌の位置が正常な部位より低い場所にあり、これを「低位舌(ていいぜつ)」と呼びます。低位舌になってしまうと、舌の側面にビラビラの歯型の跡が見られやすくなります。
舌の筋肉がしっかり発達しないと、舌表側が上あごにつけることが困難になり、タ行やナ行など、上あごに舌をつける発音がしくくなるほか、滑舌の悪さが目立つようになります。
以下のような症状が見られると、低位舌の可能性があります。
- いつもぽかんと口を開けている
- 声が小さい
- 滑舌の悪さ
- 食事をする際、クチャクチャと音をたててしまう
家庭でのチェック方法は?
低位舌なのかどうか、家庭でも確認できる方法について気になっている方もいることでしょう。ここでは、子供の舌が正しい位置にあるのか、家庭でも行えるセルフチェックの方法をご紹介します。
舌をスポットにあててみる
しばらくの間、スポット(上側の前歯の裏にある、凹んだ部位)へ舌をあててみましょう。
問題なくできる場合は、舌の位置は正常だと言えます。もし、舌をあてているのが難しかったり、口の中が疲れたりする場合は、舌が下がってしまっている「低位舌」の可能性があります。
無意識のときの口元
子供が無意識の状態のとき、口元があいているかどうか確認してみましょう。
常に閉じていて、上下の唇がついた状態であれば、問題はないと考えられます。しかし、口がぽかんと空いたままの状態であれば、舌が下あごへ密着していて、低位舌になってしまっている可能性があります。
水を飲むときの舌の位置
子供が水を飲んでいるときにも確認ができます。口腔内におさまっていれば問題はありません。しかし、舌が前に出ていたり、水を飲みにくそうにしていたりする場合は、低位舌の可能性があります。
舌の位置が下がる原因・影響は?
子供の舌の位置が下がってしまう原因は、どのようなものが挙げられるのでしょうか。ここでは、舌の位置が下がる原因や症状について紹介してきます。
口呼吸(ぽかん口)
低位舌の子供は、舌を下の前歯の後ろ側に押し付ける傾向があります。そのため、舌が気道の上に乗る形になり、空気の通り道が狭くなりがちです。その結果、口を開けて気道を確保しようとし、口呼吸になることが多くなります。この状態が続くと、口腔内が乾燥しやすくなり、口臭の原因につながることがあります。
いびきをかく
低位舌は気道をふさぐため、眠っているときにいびきをかく場合があります。いびきをかいている状態で眠っていると、熟睡できず、疲労がなかなか取れないこともあります。
※いびきのかきやすさには、個人差が見られます。
発音が悪くなる
低位舌は、舌の筋力が弱く、上あごの口蓋周囲に舌をつけられないケースもあります。舌の動きがスムーズに行かず、タ行・ナ行など、口蓋に舌をつける発音が悪くなる傾向にあります。
発音の悪さや話しにくさを他者から指摘されることで、子供が人前で話すことを避けるようになる場合があります。その結果、自分の意見を言うことをためらったり、内向的になったりすることも考えられます。このような状態が続くと、学校や集団生活に影響を及ぼす可能性があるため、早めの対策が重要です。
クチャクチャ音を立てて食べる
舌の筋力が弱い状態の場合、食事の際にクチャクチャという音を立ててしまうことがあります。食事のときのマナーの観点から考慮しても、早めに改善する必要があります。
低位舌は舌の筋が弱く、滑らかな動きをしにくいため、舌を口蓋につけながら嚥下するのに困難さを伴います。そのため、食道へスムーズに流れていかず、むせてしまいやすいです。
歯並びへの影響は?
低位舌は、歯並びにもさまざまな影響が見られます。上あごへ適切な力が加わらないため、上あごの歯並びが乱れやすくなるので注意が必要です。よく見られる状態を以下にまとめましたので、ご覧ください。
- 開咬:上の歯と下の歯が噛み合わない
- 受け口:通常よりも下あごが前方に成長する
- 出っ歯:上の前歯が下の前歯より前に突出してしまう
低位舌は、上あごが適切に成長できずに、小さくなってしまうケースもあります。そのような状態になると、上下の歯に余分な力を与えてしまうため、歯並びの悪化・かみ合わせの悪さにつながります。低位舌による症状が気になる場合は、歯科クリニックへ相談しましょう。
体への影響は?
舌の位置は、正しい発音をする上で重要な役割を持ちます。舌が正しい位置に収まっていないと、発音がしにくくなったり、舌足らずな話し方になったりすることがあります。
舌の位置が下がっていると、気管・食道の分岐を妨げやすくなり気道が狭くなり、このような状態になると、鼻呼吸がスムーズにできず、口呼吸になってしまいます。
口呼吸では、細菌・ウィルス・アレルゲンなどの物質を体内にとり込んでしまい、アレルギー発症のリスクも高まるため、早めに対処しなければなりません。
低位舌を改善する方法
低位舌を改善するためには、どのような方法があるのでしょうか。
ここでは、改善する方法について詳しくご紹介していきます。
あいうべ体操
あいうべ体操は、舌の筋肉を効率よく鍛えていける体操のことです。「あー・いー・うー・べー」と口の形を順番に動かすトレーニングで、この体操をすることで、口呼吸から鼻呼吸へと改善を目指せます。一日30回を目安に繰り返して行いましょう
ガムトレーニング
低位舌を改善する方法の2つ目は、ガムトレーニングです。1日3分以上継続していくと、舌の機能の改善を目指せます。舌に関与する筋肉の力を強化できるため、下がっている舌を正しい位置へ戻すことができます。ここでは、ガムトレーニングの方法をご紹介していきます。
ガムを左右の歯で均等に噛んでボール状に丸める
噛む力を改善していける動作です。噛みにくいと感じる側で、しっかりと噛む練習をしましょう。その後、動きをスムーズにするため、舌の上でガムを丸めていきます。
舌の真ん中にガムをのせ、上あご中央で3秒かけて押しつけ薄く広げる
舌の筋力をアップさせるため、一回で円形に広げていくようにしましょう。
舌でガムを上あごへ押しつけたままの状態で唾液を飲み込む
舌でガムを上あごへ押し付けたままの状態のまま、唾液を飲み込みます。飲みだ後、ガムが三角形に伸びるのを確認してみましょう。正しく飲み込めていれば、舌は芋虫のように動きながら、ガムはのどの方へ向かって三角形に流れていきます。
上記のガムトレーニングを1日3分間以上繰り返し行うのが望ましいです。上記の動きが十分に行えない場合、舌の機能や力が不足しています。スムーズに行えるように、トレーンニングを継続しましょう。
口腔筋機能療法(MFT)
口腔筋機能療法(MFT)と呼ばれる方法で、改善を試みる場合もあります。歯列を取り囲んでいる口周囲にある機能の改善を目指す訓練のことです。つまり、歯並びに関与している舌・唇・頬などの部位を、正常な環境に整えていくことを目的としています。
この訓練を行うことで、舌が正しい位置に戻り、気道が広がって呼吸が楽になります。また、舌が口蓋にしっかりとつくことによって、あごの成長を促し、歯並び改善も目指せるでしょう。
舌の位置が低いことでお悩みの場合は小児矯正治療を検討しよう
低位舌の状態が続くと、歯並びが悪くなるだけでなく、口呼吸になりやすくなったり、睡眠時のいびきによって熟睡しにくくなったりするなど、さまざまな影響が出る可能性があります。
小児歯科クリニックでは、歯並びやかみ合わせが悪くなる原因を特定するため、鼻呼吸ができているかや舌の位置を確認し、さらに姿勢や飲み込み方などもチェックします。低位舌の状態が見られる場合には、急速拡大装置・拡大床・マイオブレース・ワイヤー矯正などの矯正装置を使用します。舌が上あごに自然とつく状態になるよう矯正を行い、経過を観察していきます。舌のクセが改善されると、上あごが本来の大きさまでしっかり発達し、歯が正しく並ぶスペース戻り確保できます。
大人になると、歯並びは元に戻りにくくなります。舌の位置が悪く、かみ合わせや歯並びに影響が出ている場合は、できるだけ早めに小児歯科クリニックへ相談しましょう。
当サイトでは、全国にある矯正歯科クリニックをご紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。